屋根は常に紫外線や雨風などの影響を受けているため、徐々に劣化していきます。そのため、屋根は定期的なメンテナンスやリフォーム工事が必要となります。
屋根のリフォーム方法には、屋根塗装の他に「カバー工法」「葺き替え」というものがあります。このページでは、屋根塗装以外のリフォームの種類や特徴について紹介します。
屋根のリフォームのリフォームには大きく分けて以下の3つの方法があります。
・塗装(塗り替え)・・・既存の屋根の上に塗料で新たな塗膜をかける
・カバー工法(重ね葺き)・・・既存の屋根の上に新たな屋根材を重ねて設置する
・葺き替え・・・既存の屋根を全て撤去し、屋根材を新たに設置する
屋根のリフォームでは、使用されている屋根材の素材や劣化状況を考慮しながら、適切な工法を選択する必要があります。それぞれの特徴について説明していきます。
カバー工法とは、既存の屋根の上に新たな屋根材を重ねて設置するリフォーム方法です。新たな屋根材には、主に軽量な金属材やガルバリウム鋼板などを使用します。
カバー工法には、以下2種類の施工方法があります。
・直接下葺き材カバー工法
直接下葺き材カバー工法とは、屋根材と防水シートの下にある下地材の野地板に劣化がみられない場合におこないます。
既存の屋根の上に、直接防水シートを張り上から新しい屋根材を重ねる施工方法です。カバー工法の中では最もスタンダードな施工方法です。
・野地板増し張りカバー工法
野地板増し張りカバー工法とは、既存の野地板に劣化がみられる場合におこなう方法です。既存の屋根の上に、野地板を張ってから防水シートと屋根材を重ねる施工方法です。
こちらは築年数が30年以上経過した建物で行うことが多い施工方法ですが、直接下葺き材カバー工法に比べ、野地板を重ねるため屋根が重くなり、費用の負担も大きくなります。
【カバー工法のメリット】
・既存の屋根材を撤去する必要がないので、工期が短くて済む
・既存の屋根を撤去しないため、廃材がほとんどでない
・既存の屋根材の撤去費用や廃材処分費用がほとんどかからないため、費用を抑えることが出来る
・屋根材を撤去する必要がないため、2004年以前に使用されたアスベストを含んだ屋根材のリスクに対応することができる
・屋根材が2重になるため、断熱効果や防音効果が期待できる
【カバー工法のデメリット】
・屋根が重さが増えることにより、建物の耐震性に影響する可能性がある
・カバー工法に使用できる屋根材が限られている
・屋根の下地が劣化している場合や、屋根材の強度が劣化によって低下している場合は施工が出来ない
・瓦屋根など、カバー工法には向いていない屋根がある
・保険会社の火災保険が使えなくなる可能性があり、事前に加入している保険会社へ相談する必要がある。
カバー工法に使われる屋根材は主に2種類あります。素材の種類別の特徴や単価、施工金額の相場について説明していきます。
・ガルバリウム鋼板
単価:5,000円~10,000円/㎡
ガルバリウム鋼板とは、鉄(鋼板)を亜鉛やアルミニウム、シリコンを組み合わせた合金でメッキ加工したものです。
軽量なため耐震性に優れ、金属素材の中でもサビにくく耐久性が高いため、カバー工法には最も適した屋根材です。
・アスファルトシングル
単価:5,000円~8,500円/㎡
アスファルトシングルとは、不燃布やガラス繊維にアスファルトを浸み込ませ、その上に砂粒で表面に着色をしたシート状の屋根材です。
他の屋根材に比べ耐久性は劣りますが、ゴムのように柔らかいシート状の屋根材のため、加工がしやすく複雑の形状の屋根でも施工しやすいという特徴があります。
屋根材の材料費に加え、カバー工法を行う場合には下記の費用がかかります。
・足場代
単価:600円~800円/㎡
足場の設置は、作業員の作業性や安全を確保するためには必要不可欠です。足場代はリフォーム費用の20%前後占めます。
・既存棟板金の撤去費用
単価:30,000円~55,000円/棟
カバー工法を行う際には、初めに棟板金と貫板の撤去を行います。棟板金とは、屋根最上部にある三角の形状をした金属の板のことです。雪止めが設置されている場合は、雪止めの撤去も行います。
・ルーフィング(防水シート)の設置費用
単価:500円~1,000円/㎡
棟板金や雪止めを撤去した後におこなう作業です。ルーフィングとは、建物を雨から守る防水シートのことです。防水シートを設置することで、雨漏りなどを防ぎ防水機能を確保することができます。
・棟板金の設置費用
単価:3,000円~6,000円/㎡
屋根材を設置した後におこなう作業です。棟板金の下地となる貫板を設置後に、台風などの強風に耐えられるよう棟板金をビスでしっかりと固定します。
・管理費及び諸経費
単価:工事費の5~10%
管理費及び諸経費には、人件費や交通費など現場で必要となる経費や、作業車両の償却費用などが含まれます。
葺き替えとは、既存の屋根を全て撤去し、屋根材を新たに設置するリフォーム方法です。
既存の屋根を全て取り払う手間がかかりコストは大きくかかってしまいます。しかし、屋根を全て取り払うことにより、屋根材をより軽いものにし耐震性を向上させることも可能となります。
【葺き替えのメリット】
・既存の屋根材を一度取り払うため、下地材の劣化状況を確認し補修することができる
・様々なデザインの屋根材を選ぶことができる
・新築同様に屋根を一新することが出来き、建物の雰囲気を大きく変えることができる
・既存の屋根材より軽い屋根材を使用することで、耐震性を向上させることができる
・新築同様に屋根を一新することにより、次回のメンテナンスまでの期間が長くなる
【葺き替えのデメリット】
・他のリフォーム方法に比べ、費用が高額
・既存の屋根材を一度取り払うため、大量な廃材がでる
・大規模にな施工になるため、工期が長くなる
・2004年以前に使用されてたアスベストを含んだ屋根材の場合、飛散しないよう近隣への配慮が必要
・アスベストを含んだ屋根材の場合、飛散防止の処理費用が高額になるケースがある
葺き替えに使われる屋根材には主に4種類あります。素材の種類別の特徴や単価、施工金額の相場について説明していきます。
・ガルバリウム鋼板
単価:5,000円~10,000円/㎡
・アスファルトシングル
単価:5,000円~8,500円/㎡
・瓦(軽量瓦)
単価:6,000円~12,000円/㎡
軽量瓦とは、従来の粘土を焼き上げ成形する陶器の瓦とは違い、金属やセメントなど軽い素材で作られた瓦のことです。軽量瓦には、セメントを主成分とした「スレート瓦」や台風や地震に強い「防災瓦」など様々な種類のものがあります。
・スレート(カラーベスト、コロニアル)
単価:4,500円~8,000円/㎡
スレートとは、セメントに繊維を混ぜて固めて板状に成形したもので、住宅の屋根では最も使用されている屋根材です。粘土を焼き上げ成形する日本瓦に比べ、軽量なため耐震性に優れているという特徴がありますが、割れやすく、紫外線に弱いためメ色褪せが目立ちやすいといったデメリットもあります。
屋根材の材料費に加え、葺き替えを行う場合には下記の費用がかかります。
・足場代
単価:600円~800円/㎡
・既存棟板金の撤去費用
単価:30,000円~55,000円/棟
・既存の屋根材の撤去費用
単価:1,500円~3,000円/㎡
葺き替えでは、既存の屋根材を撤去してから、新しい屋根材を貼り付けます。そのため、撤去作業にも費用が発生します。
・アスベスト処理費用(アスベストを含む古いスレート屋根の場合のみ)
単価:20,000円~85,000円/㎡
既存の屋根に、アスベストを含むスレートを使用している場合に別途必要となる費用です。
・ルーフィング(防水シート)の設置費用
単価:500円~1,000円/㎡
・棟板金の設置費用
単価:3,000円~6,000円/㎡
・管理費及び諸経費
単価:工事費の5~10%
屋根塗装は、他のリフォーム方法に比べ価格を安く抑えられるので価格を重視した方にはもっとも向いているリフォーム方法です。
しかし、ひび割れやズレなど、屋根材の劣化が激しい場合には屋根塗装だけではカバーすることができません。
カバー工法は、葺き替えに比べると既存の屋根材を撤去する必要がないため、工期を短くすることが可能です。また、屋根材が2重になるため、断熱効果や防音効果が期待できます。
しかし、カバー工法に使用できる屋根材は限られており、屋根の下地に劣化がみられる場合や、屋根材の強度が劣化によって低下している場合は、カバー工法で施工することは出来ません。また、屋根が重くなることにより、耐震性に影響する可能性があります。
葺き替えは、既存の屋根を一度取り払うため、他のリフォーム方法ではメンテナンスすることができない、下地材など屋根内部のメンテナンスを行うことができます。
そのため、ほかのリフォーム方法に比べ、より一層建物の耐久性を高めることができます。しかし、費用が他のリフォーム方法に比べ高額になり、施工の規模が大きくなる分工期も長くなります。
以下の表は、約30坪の建物の屋根を施工する場合を比較したものです。
塗装 | カバー工法 | 葺き替え | |
---|---|---|---|
費用 | 約30~100万円 | 約70~120万円 | 約100~250万円 |
耐用年数 | 約5~20年 | 約15~30年 | 約15~50年 |
工期 | 約10~12日 | 約6~8日 | 約7~10日 |
断熱 防音効果 |
遮熱塗料などの特殊な塗料を選ぶことで建物の断熱、防音効果を期待できる。ただし、カバー工法に比べると効果は低い。 | 屋根材が2重になることで断熱、防音効果を高めることが可能。 | 下地材から建物を見直すことが出来るため、使用する材料によって断熱、防音効果を高めることが可能。 |
耐震性 | ひび割れなどの劣化症状の補修を行うことで建物の耐久性の維持は可能になる。 | 屋根が重くなることで耐震性が低下してしまう可能性が高い。 | 下地の補強や既存の屋根材より軽量な屋根材を選ぶことで耐震性を高めることが可能。 |
屋根材別の耐用年数やメンテナンスの時期や方法は以下の通りです。
上記の耐用年数を経過した屋根材では、屋根塗装を行ったとしても塗料が定着せず2~3年も持たずに剥がれなどの不具合が発生する可能が高くなります。
そのため、耐用年数を経過した屋根では、同時期に防水シートや野地板などの下地材の耐用年数も経過している場合が多いため、葺き替えを行うことをお勧めします。
雨漏りが酷く、屋根材に劣化がみられる場合、カバー工法や葺き替えをおこうことで雨漏りを止めることが可能です。葺き替えでは、既存の屋根を全て撤去し新たに屋根材を設置するため屋根の下地材を含め補修を行うことが可能です。
カバー工法の場合には、既存の屋根の上に新たに防水シートと屋根材をかぶせることで雨漏りを改善することができます。しかし、カバー工法で施工内容に不備があった場合には、再度雨漏りが発生してしまい、下地を腐食してしまう可能性があります。その場合には、あらたに屋根の葺き替えを行う必要があります。
また、カバー工法をおこなうことで屋根が2重になることで雨漏りが発生した場合、原因の箇所を特定しずらくなるため注意が必要です。
アスベストとは、非常に細い繊維状の天然石のことで、綿のような外見のため日本では石綿(いしわた、せきめん)と呼ばれています。アスベストの繊維は、目に見えないくらい細かく軽いという特徴があります。そのため、飛散しやすく呼吸をした際に、空気とともに体内へ吸い込まれてしまいます。
吸い込まれたアスベストは、天然石のため繊維が丈夫で変形しずらいという特徴があります。そのため、繊維は肺の組織に刺さったままとなり、肺の繊維に長期間潜伏することで、肺がんや中皮腫、アスベスト肺を発症してしまう恐れがあります。
アスベストの耐火性や断熱性、耐久性の高さからスレートのつなぎとして練りこまれ、石綿スレートという名称で広く屋根に使用されていましたが、その危険性から、2004年にはアスベストを1%以上含む製品の出荷が原則禁止となりました。そのため、2004年以前に建築し現存している多くのスレート屋根にもアスベストが含まれている可能性があります。
アスベストを含んだ屋根のリフォームでは、建物の劣化状態にもよりますが、アスベストが含まれた屋根を覆い隠すカバー工法か、完全に撤去してしまう葺き替えのどちらかを選択する必要があります。
葺き替えを行う場合には、アスベストを含んだ屋根材を全て撤去することができる問メリットはありますが、高額な撤去費用が必要となります。
カバー工法を行う場合も、覆いかぶせるだけなので費用が安く、工期も短く済むというメリットはありますが、アスベストを含んだ屋根材を残したままの状態となります。そのため、後々のメンテナンスでは屋根材の撤去では葺き替えに比べ、さらに高額な費用がかかる可能性があります。
アスベルトを含む屋根のリフォームを検討される際には、今後のライフプランを考慮したうえで、最適な選択ができるよう、業者へ相談されることをお勧めします。
屋根のカバー工法や葺き替えを行うことで、屋根塗装に比べ初期補用はかかりますが、建物の寿命を大幅に伸ばすことができます。そのため、屋根のカバー工法や葺き替えは、長期的なコストパフォーマンスが非常に高いリフォーム方法です。
カバー工法や葺き替えを行う場合には、それぞれメリットデメリットがあり建物の状態によっては施工が行えない場合もあります。
屋根のリフォーム方法で、お困りの際には、きちんとした調査を行ってくれる信頼のできる業者へ相談してみてください。